(Death Stranding)クリア後感想・デスストランディングは意外と普通のゲームだった
「5.2」
これが11月30日現在のメタスコアのユーザレビューの点数です。
10点満点の内、ある人は10点を付け、ある人は0点を付けると言った具合に真っ二つに評価が分かれています。内訳は好評と悪評が8000同士で拮抗。
神のゲームか、悪魔のクソゲーか!?
レビューサイトは信者と背信者がお互いにうんこを投げ合う地獄と化し、もはや凡人の足の踏み込める場所ではなくなっており、荒れていると言ってよい状態であります。
気になりますよね。こんなに評価が分かれるゲームなんて。
「Not for everyone」
「凄い新しいゲーム体験」
「ちりばめられたメタファーや表現」
そのような文字が高評価のレビューのあちこちに踊ってるわけです。
果たして低評価を付けている人は
「新しいものに適応できず難解なものを退屈と断じる原始人なのか?」
それとも高評価を付けている人がただの「意識高い系のスタバマック野郎」なのか?
それを確かめるために私はゲームを購入し、プレイし、クリアした。
結論から言おうと思います。
これは・・・普通のゲームだ!(面白いよ)
プレイ初日・・・退屈!
ムービー&ムービー、少し動かす、そしてムービー
そのムービーもテンポが長くて退屈であり、冗長。
やっとムービーが終わり始まったゲーム部分も結局は退屈で、とくに苦労する部分も工夫する部分もなくA→B地点へ移動するだけ。はっきり言ってクソつまらなかったです。
様々な専門用語などは古代ギリシア語が由来であったり、いろいろなメタファーが散りばめられているらしい。それを理解しながら見ればまた面白さがあるのかもしれないが、こちとらそんな教養がないのでさっぱり理解できなかったです。
しかし退屈だと思うのに、そう思うと「お前はIQが低いからこの話が分かんねーんだよ」と小島監督に言われるようで、…まるでムービーで小島監督からIQを殴られるような体験でした。
追い打ちをかけるのが全体のムード。陰鬱で、暗い。これを3時間、4時間、5時間と続けていっても一向に改善しない。ああ、ずっとこの調子なんだなこのゲームは。と悟ったころには低評価レビューが正しいと思うようになった。「高評価を付けている人は難しいものが理解できる俺かっけーなアレな人達なんだ。」
まあ、それでもクリアまでは遊んでみようと思ったのでなんとか酒を飲みながらしばらく続けてみた。すると…
プレイ数日後・・・計算された退屈さというスゴさ
プレイ後10時間は立っただろうか。何かが変わってきた。
相変わらずUIは不親切で文字は小さく、キャラの動作はもっさり、ムードは陰鬱、かといって広がりのないマップ。移動するだけのミッション。意味不明で尊大なストーリー。ホントクソゲーだなこれと思っていた。いたのだが!
…いつの間にか、自分の中に「次はこれをこうして、それからああしようかな」という、意思が生まれてることに気が付いた。今思えばゲームのシステムを理解してきたからだったのかな。そしてゲーム自体がプレイヤーに面白さを全開放してきた時間帯でもある。それがプレイ後10数時間でした。
プレイヤーが自分で工夫や攻略を考える余地があり、そこに難易度があり、攻略のパターンもある。良ゲーの基本だけど、このゲームにもそれが確実にあることに気が付いた。ルートを考え、開拓し、そこに他プレイヤーとのつながりも利用する。というのは確かに新しいゲーム体験でした。面白いです。
思えば、前半の退屈さはある程度計算されたものだったようです。
AからBへの移動に圧倒的に苦労する。退屈で、陰鬱で、つまらない。
だからこそ、そこを創意工夫し、克服することが楽しい。
いつしか国道建設の為に材料集めに奔走していた自分がそこにいました。
ん?「ある程度」?
そう、そこが実はポイントで。後述します…
余談(ちなみに、高評価レビューのいくつかには「AからB地点への移動そのものをゲームにした小島監督はすげえ!」みたいな評価もありましたが、むしろワザと退屈に作ってると思うのでそれは違うなと思いました。)
これメタルギアだ!
材料集めに奔走しだすと、ミュールという敵からアイテムを奪っていくことが必要になります。それもできるだけ殺しはなしで。
そのために、草陰に潜み、相手の動きを予測し、時に後ろから近づいて拘束することも必要になります。これが面白いのです。侵入経路を考えたり、どの敵を倒していくかとか、あるいは正面から力技で行くかと検討したり。(装備をたくさん持っていくと、持ち帰れる素材が少なくなるジレンマもあったり)
いやー、まるでステルスゲームのような面白さが隠れてるわけですね。このデスストランディングには。
ん?ステルスゲーム?
ステルスゲームの祖は?
小島監督!
そりゃあんたがステルスゲーム作ったら面白いよ!
何という事でしょう。あんなにいろんな場所を探してもいなかったソリッドスネークが、サム・ブリッジスの中に息づいているじゃありませんか。うひょー。
プレイ後さらに数日、エンディングへ
システムを理解し、物語もなんとなく理解した気になりつつあり、これからどんどん面白くなるんだろうな!そう期待していた時、突然蜜月が終わります。
「これが最後の配送依頼だ」
え?もう終わり?もっといろいろ広がりがあると思ってたんだけど…だってAAAタイトルだって聞いてたのに?などと思ったのですが、まあゲームとしては面白かったし良いかなと思い、その最終ミッションを受けました。
最終ミッションだけあって距離が長く、かなり手こずりましたがなんとかクリア。見事大陸を一つにつなげました。やったぜ。 そこからはお約束と言うか真のボス船へ向かって自分の作ったルートを逆走して大陸の出発地点まで帰るという演出を含んだミッション。この演出は良かったですね。感慨深かったです。
ところが。
こっからがちょっと・・・
今度こそエンディングへ。エンディング…え?
ここからの一本道は正直言って退屈そのものでした。
耐え難かったです。
エンディングの展開は2転3転といえば聞こえはいいのですが、謎の解答や説明にほとんど費やされます。何時間も。
その間、プレイヤーは一応操作もできる瞬間もありますが基本的には製作者の指定したとおりに動くラジコンであり、一本道を眺める傍観者でしかなくなります。
そこには創意工夫する余地も、他プレイヤーとのつながりもありません。目の前に小島秀夫という巨星がその才能を存分に発揮している様をただ見守るだけなのです。
かえして…僕の作った国道をかえしてよ!もうムービーはいいよ!
それでも小島監督は容赦なくこちらをムービーで殴ってきます。
やめてくれ。低IQにそれは効く。
この時点で私は口半開きで「ハヤクオワッテ・・・オワッテ・・・」とコントローラーを握りしめてるだけの低知能な生き物だったのですが、小島監督は許してくれませんでした。
意味不明なタイミングでエンディングロールが流れ始め、謎解きもどきをやれという試練がやってきます。エンディングロールが流れてるのにエンディングにいかない。
もうどうしたらいいか分からず、とりあえず酒を飲みながらコントローラーをガチャガチャして、30分くらい退屈な時間を味わった後ようやくなにかのきっかけで何かが進行して、真のエンディングに向かったような気がします。詳細な記憶は不明です。
結局ムービーと操作部分含めて3時間くらいはあった、いやそれ以上か?
ただ意味不明なだけでなく、ストレスが溜まる仕様でした。説明しにくいけど…
このエンディングの退屈さは、ゲームの後味をかなり悪くしてくれたなと思います。
どうしてこうなった!
2人の小島秀夫
こう思う事にしました。
このゲームは2人の小島秀夫が作ったんだと。
一人は
熟練の天才ゲーム職人 小島秀夫
もう一人は
熱血映画大好き映画監督 小島秀夫
このゲームはUIが見にくく、ゲームシステムの面白い部分への誘導もとても少なくて、結果多くのプレイヤーが楽しさを感じる前に辞めてしまっているのはレビューを見ても明らかです。
これはとてももったいない事です。面白いゲームなのに。
それに、言われているように人を選ぶゲームでもありません。
普遍的なゲーム性を持った、熟練の職人が作り上げた、ちゃんとしたゲームです!!
…しかしながら、熟練の天才ゲーム職人小島秀夫にとって、面白いゲームを作るっていうのは簡単な事なのかもしれません。
凡百のゲーム制作者なら、自分の作ったゲームを楽しんでもらうためにあれこれプレイヤーを誘導し、楽しんでもらうよう頑張るところですが、彼にとってはワザワザアピールするポイントじゃないのかもしれません。
「クセになってんだ。面白いゲーム作っちまうの・・・」
ところが熱血映画監督小島秀夫は、そんなクールさは併せ持っていません。サービス精神と熱意とセンスとそのほかいろいろな質量と熱量をそのままプレイヤー、いや観客に投げつけようとしてきます。普通盛を頼んだ学生には超特盛を与えるような気前の良さを持っていて、それがこちらを胸焼けさせてしまうのです。
デスストの前半の退屈さはゲーム監督小島秀夫が「ある程度」計算したものだったに違いないです。が、その上に映画監督小島秀夫がいろいろ乗せたせいで、多くのプレイヤーの許容量を上回ってしまった気がします。もったいないです。
ともあれゲーム部分がしっかりと面白いのは確かだし、それが映像演出ともなかなかかみ合ってて味わい深いものにもなってます。
それに主人公サムが良いキャラしていて、終わったころには赤ちゃんBBと共に、多くのプレイヤーのお気に入りになっている事と思います。